2018年11月25日日曜日

2018/12/04 交通研フォーラム基調講演 「次世代公共交通システムのドライバレス自動運転  ---国外情勢と我が国における実用化への挑戦---」 について


標記の2018年12月4日 交通研フォーラムの基調講演「次世代公共交通システムのドライバレス自動運転 ---国外情勢と我が国における実用化への挑戦---」の内容を以下にまとめておきます。

ご清聴ありがとうございます。

なお、以下の内容を含むスライドのコピーをこちらからご入手ください。
(講演時に申し上げたPWつきです。その後ご指摘をいただいた誤記の修正を含め更新しました。)

なお、ちょうどこの講演と同時に、JR東日本殿から、山手線におけるドライバレス運転の夜間試験の計画についての発表がありました。

[1] 2018/12/04 交通研フォーラム基調講演
次世代公共交通システムのドライバレス自動運転 ---国外情勢と我が国における実用化への挑戦--- 
     東京大学大学院電気系工学専攻 教授 古関 隆章 (KOSEKI, Takafumi )

[2] はじめに


都市鉄道の運転とその将来

Automated Guided Transport
なぜ自動運転か?
地下鉄への適用:国際動向 標準化
自動車と鉄道の自動運転技術
日本の鉄道事業者の取り組み
地下鉄への応用可能性
都市鉄道一般への展開
最近の検討動向
省エネルギー運転と自動運転

[3] 都市鉄道の 運転とその将来


[4] 持続可能な鉄道経営のために

(1) 情報通信技術の活用
(2) 需要への柔軟な対応
(3) 利便性を追求する短編成高頻度運行
(4) デマンド運行?
(5) 持続可能なビジネス:省力化と高安全・高信頼運転の両立

[5] Automated Guided Transport


[6] 1980年台に始まる新交通システム

軌道交通 運転自動化の パイオニアは日本!
日暮里・舎人ライナー(2008-)
神戸ポートライナー(1981-)

[7] 魅力的な都市空間活用と移動手段

ピープル・ムーバ(イギリス バンクーバ空港1984-)
VAL (フランス リール市 1984-)

[8] 利便性と高速性

三菱重工が開発している高速AGT
磁気浮上車 HSST

[9]なぜ自動運転か?


[10] 持続可能な鉄道ビジネス:省力化と高安全・高信頼運転の両立

1. 需要への柔軟な対応
2. 利便性を追求する短編成 高頻度運行、 デマンド運行?
3. 自動運転ならではの価値

[11] 輸送需要変化への柔軟な対応

(1) 経済成長への対応から人口減の社会
(2) ピークへの対応力を持ちながら、オフピークでも資源有効活用のできるシステム
常に長編成の列車を走らせるわけにはいかない
少ないスタッフで、運転もメインテナンスも持続
可能な形? ==;自動化 IT活用
(3) システム技術としての国際競争力

[12] 利便性を追求する短編成高頻度運行, デマンド運行?

(1) 輸送需要が少なければ、列車を間引くのではなく、短編成で利便性の高い高頻度運行を行う。
(2) 交通弱者対応:高齢時代はデマンド運行
(3) 運転の完全自動化は、イベント時の超高頻度運転および終夜運転にも貢献

[13] 地下鉄への適用:国際動向標準化


[14] IEC 62267 WG39における運転方式分類


[15] パリ地下鉄でのUTO実用化

地下鉄14号線でドライバレス運転の実用化
← IEC62267に準拠した設計、ホームドア(フルスクリーン)
によるドライバレス運転の実現化
地下鉄1号線での無人運転化(順次)、
→ CBTC(列車無線制御システム)への変更とセット
IEC62267で規定されたホームドア(腰高式)の実現
・パリ地下鉄公社(RATP)によるドライバレスは、省力化、
省エネルギー化を目標
・トンネル内での非常停止等に対しては、OCC(Operation Control
Center) からの指令、遠隔リセットによる再起動で基本的に
対応するが、万が一の場合、Staffが30分以内に到着し、避難誘導を行う

[16] UTO世界市場の広がり


[17] Bombardier社のビジネスモデル

シリーズで世界展開 Innvovia Bombardeier社 HPより

[18] 世界市場での応用展開


[19] 欧州最新動向: ニュルンベルク地下鉄の例


[20] Technical information on UTO of subways in Nürnberg

Source: Dr. A. Steingroever 02. January 2018
同氏は10/4の水間寄付講座のワークショップに招聘され以下の内容を直接日本の専門家に紹介した。

[21] RUBINプロジェクト

ホームドアのないUTO地下鉄段階的導入
RUBIN: UTO without platform doors
Source: Dr. A. Steingroever, Siemens 02/01/2018

[22] 元々あった2路線 Original two lines


[23] 自動運転化フェース1 2008年5月開業

Automation phase 1: May 2008

[24] 自動運転化フェース2 2009年春開業

Automation phase 2: Spring 2009

[25] 自動運転化フェース3 U3の新設

Automation phase 3: New U-Bahn 3

[26] Siemens社が提唱するATOの利点

Advantages of ATO by Siemens
(1) 人員削減(95人減?) A fewer personnel
(2) 運転士人員を旅客サービスに充てる Better passenger service
(3) 運転信頼性の向上 Higher operational reliability
(4) 客室の安全性の向上 Better security
(5) 短時隔運行 旅客待時間の削減 Shorter headway
(6) ピーク需要への柔軟な対応
Flexibility in changing demand
(7) 車両数の削減 (初期投資の削減
3千8百万ユーロの削減効果)
Fewer rolling-stocks
(8) 省エネルギー運転 Energy saving operation
(9) より魅力的なサービス (需要増!)
Better service quality
===費用便益効果の増進 Better B/C
Source: Dr. A. Steingroever, Siemens 02/01/2018

[27] UTO 運転指令所の写真

Photograph of OCC for the UTO

[28] レーダとカメラによるトンネル内監視システム

Supervision system in the tunnel
転落検知のビームは50cmごとにあり、隣接する2つが同時にさえぎられると転落ありと検知する。
UTOにホームドアは不要。

[29] UTO 車上安全監視センサシステム

Onboard sensor system for safe UTO
センサの信頼性が重要

[30] 100秒時隔高頻度運転における平常時自動運行管理の実績例

Regular frequent train service: achievement of train headway of 100 sec.

[31] 100秒時隔高頻度運転における自動運行

管理の小乱れ時遅延伝搬抑制効果(実績例)
Example of successful automatic dynamic train operation control for avoiding delay propagation

[32] 日本の都市交通の運転自動化に向けた取組


[33] 自動車と鉄道の自動運転技術


[34] 付加的機能から入ったITS

---自動運転なんて....
安全と直接関係しないところから着手したITS
(1) Advanced navigation system
(2) Electronic toll collection
(3) Optimal traffic control
(4) Efficient road management
(5) Efficient commercial cars
(6) Pedestrian support
(7) Assistance of drivers
(8) An assistance of an emergent vehicle
Mobility as a service?

[45] 自動化レベル: 自動車技術ではGoA-5までが議論されている。


[36] 自動運転はビジネスの核心に?

Electronic traction control unit
Graphical recognition
Displays, warning systems
Actuators
Sensors

[37] 急激な変化

エンジニアのおもちゃから実用化へ?
自動車の電気化の時代を迎えて

(1) 内燃機関から電気モータへ 頭脳も足回りも電気!

(2) モータ駆動 制御の速さ、精度、再現性....
電気現象は機械より2桁早い motion control
電気ー機械エネルギー変換の双方向性
回生制動 バッテリーマネージメント
(3) 情報も電力も道路から: 走行中WPT
(4) 人が動かす乗用車から本当の「自動車」Automobileへ
(5) 考えてみればもともと 「Toyota Motorsだった?」
Mobility as a service

[38] 鉄道屋は自動車の技術発展から何を得るのか?

(1) 汎用センサの利用による高機能化、省コスト化
(2) 安全性の考え方
(ドライバーはバックアップか、完全にシステム依存か)
(3) セキュリティ(ハッキング対策等)の考え方
(4) 国際標準化の考え方
(国際商品としての自動車は、国際基準で規定する場合も)

[39] 鉄道と自動車:

融合研究分野ITSへの 交通研の取り組み

[40] 日本の鉄道関係者の取り組み


[41] 地下鉄への応用可能性


[42] 日本地下鉄協会海外調査

ドライバレス=UTOの思想
(P. Griffe 氏 2001年11月面談)
運転関係に経験豊富な職員を指令員、巡回員という形でサービス業務に振り当てる。
経済上の理由ではなく、乗客に対するサービスの質の向上を想定してドライバーレス全自動運転の利点があると考運転えて採用した。
避難誘導のため乗務員が必要という考え方はない。指令所からの音声による誘導のみで十分かは、難しい問いである。基本的原則は燃えても次駅まで持っていくという考え
方を取っている。駅間停止の可能性は非常に小さい。駅間停止に至る事態は、可能性が非常に低いということで切り捨てる考え方になっている。テロによる大規模な爆破
事件があったときに、乗務員が1人いても仕方がない

[43] 福岡市交通局の挑戦 福岡市 説明パンフレットより

広報ではドライバレス・レディの自動運転システムを積極的には述べていないが、火災対策を中心に本格的な検討を行い開業に至った。

[44] 日本地下鉄協会における調査検討

2005 3月「地下鉄における運転方式の課題と対応策に関する検討」
----当面は運転士付き=GoA2による開業とした。
2014年2月から 地下鉄における運転方式の課題と対応策に関する調査検討小委員会(地下鉄のドライバーレス運転に関する調査検討)を現在までこれまで
14回開催し2018年度から「委員会」に昇格して、検討継続中

[45] ドライバレス運転: 添乗員 DTO と巡回員 UTO

添乗員: すべての列車に乗務、動力車操縦者運転免許を有さなく
ても良い。列車先頭部の乗車でなくとも良い。
巡回員: 数列車中1列車に確率的に乗務、動力車操縦者運転免許
を有さなくても良い。客室を巡回する。
== 巡回員付きドライバレス(UTO) が、公共交通の 国際標準。
日本で議論する添乗員付ドライバレスATOの段階的導入

[46] 広範な都市鉄道への展開と技術的課題


[47] 交通研発表 前座としての本講演

(1) 地方鉄道を対象とした自動運転技術活用
(2) 地方鉄道における営業車両を活用した軌道状態の監視
(3) 運転支援装置を活用した省エネルギー運転の評価

[48] 今年の報道に現れる我が国の動静

(1) JR九州
JR九州が自動運転研究に着手 大量退職に備えプロジェクトチーム発足 19年度にも試験運行---早ければ2019年度中の試験運行を目指す。自動運転技術の活用で乗務員の負担を軽減し、人材不足や将来的な大量退職などに対応したい考えだ。(西日本新聞
2018/02/13)

(2) 東京メトロ

東京メトロ社長、「電車の自動運転は勉強すべき課題」山村社長は働き手の確保について、電車の自動運転の導入は「課題の1つで勉強していくべきだ」と指摘。丸ノ内線が実験の候補になりうる。 (日本経済新聞 2018/06/15)
(3) JR東日本
JR東日本が山手線などで業務員などを乗せないで運行する「自動運転方式」を検討している. (読売新聞 2018/08/13)

[49] 技術検討の昨今の活発化

日本地下鉄協会・地下鉄事業者
2018/04- 地下鉄における運転方式の課題と対応策に関する調査検討委員会(地下鉄のドライバーレス運転に関する調査検討)
2019/01 欧州技術調査団
JR各社
2018前半 無人運転検討準備委員会 および その分科会
2018.10- ATS-DKをベースとした自動運転に関する検討委員会
(水間主査)
国土交通省 鉄道局
技術基準検討会(運転協会で実務レベル検討会が精力的議論)
2013?- [運転部門]緊急停止操作係員付きドライバーレス運転
2018.12- 自動運転検討委員会
東京大ヒューマンモビリティ安全設計学寄付講座 ATO国際WG
交通安全環境研究所 地方鉄道への展開 本日

[50] DTO@地上の都市鉄道で考えるべきこと

(1) 踏切での安全性の確保
(2) 前方監視による安全性確保
(3) 避難誘導による安全確保

[51] (2018時点で)懸念すべきこと+ 技術基準の検討

(1) すでに海外でのUTO導入実績が多数ある中でのDTO技術検討であること。
(2) 自動車分野での自動運転の技術が国内外で急速に研究されている中での議論になっていること。
(3) 高架や地下鉄以外もDTOの検討対象に:安全確保上で考慮すべき点が多いこと。
(4) 「緊急停止操作係員付きドライバーレス運転」の技術基準が継続検討されている。
関連事業者が独自に導入を進めた場合、横通しの議論をどのようにするか?国際標準との関係は?

[52] 省エネルギーと自動運転


[53] 省エネルギー運転の基本思想と 「水間プロジェクト」

省エネルギー運転( 2 010 年 時点 ):運転支援による省エネ
エネルギ蓄積デバイスの導入は当面将来課題とする。
走行時分は守る。
出来るだけだ行を長く導入する。
回生ブレーキを最大限有効活用する (ベストエフォート)
+大きな回生パワー放出を回避し回生失効を防
定電力ブレーキ!
無駄な再力行を避ける。
加減速は最大性能を用いる: (加減速時間の最小化!)

[54] 人にとっての省エネルギー運転の難しさ

高速域で遠くからゆるいブレーキをかける。最後に強いブレーキで停まる。(ここが人にはとても難しい!)
粘着の影響は?

[55] 日本地下鉄協会 省エネルギーATO実証試験


[56] 日本地下鉄協会

省エネルギーATO評価

[57]おわりに


鉄道事業の将来に明るい展望をもつために

自動運転 新交通システムでの実現は先行したが、鉄道では、「黒船」対
策として始まった。  
   鉄道におけるDTO/UTO実用化では、欧州(+マレーシア、シンガポール、中国) の後塵を拝している日本
情報と実在システムの融合:
安全かつ高品質・高信頼な制御
本来は日本のお家芸 のはず。 ??
自動運転の付加価値: 人口減少社会での持続的鉄道運行
2018年に 国内の 風が変わった
運行の柔軟性+省エネルギー、ビッグデータへの対応と人工知能応用
しかし、ドレイバレス・システムを支えるのは、
運転や設備をよく理解した人の力

当面はGoA2.5? しかし、 数年内にGoA3をめざした技術開発 ---- When GoA4???




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内田大悟 さんのコメント...
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