2011年11月23日水曜日

日本地下鉄協会リニアメトロ推進本部個人会員総会2011/11/24 講演「軌道系交通へのリニアドライブ技術応用の最新動向」について


日本地下鉄協会リニアメトロ推進本部個人会員の皆様 
拙い話をご聴講いただきありがとうございました。 
 
日本地下鉄協会リニアメトロ推進本部個人会員総会2011/11/24@スクワール麹町
講演「軌道系交通へのリニアドライブ技術応用の最新動向」
東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻 
古関 隆章
 
自己紹介
 大学院生時代: リニア誘導モータの研究
 ドイツでの個人的体験
 現在の研究活動と日本地下鉄協会との関係

はじめに
1. リニアドライブと磁気浮上
2. 世界の磁気浮上鉄道の技術動向(大田市MAGLEV2011からの話題)
3. 中央新幹線リニア
4. 鉄輪形リニア:カナダ, 日本, 中国市場
5. リニアモータ国際規格化
6. おわりに 

1. リニアドライブと磁気浮上
軌道系交通におけるリニアドライブの特長と短所
磁気浮上とリニアドライブ
各種方式の組み合わせと機能上の相違
EMSに基づく磁気浮上技術開発の歴史
 ドイツ Transrapid
  日本 HSST

2. 世界の磁気浮上鉄道の技術動向(大田市MAGLEV2011からの話題)
ドイツにおける磁気浮上開発の盛衰と技術的問題点
昨今の話題: 新たな意欲を見せるブラジル、中国、韓国
韓国 機械技術研究所の磁気浮上鉄道
韓国のリニアドライブ応用の問題点

3. 中央新幹線リニア
国鉄技術研究所の先端技術への意欲とJRリニアの開発の経緯
日本はドイツよりも5年遅れている?(1987 Maglev Hamburg
山梨試験線における開発と東海旅客鉄道の主体的役割
中央新幹線計画
国土交通省 中央新幹線技術評価委員会 における議論
国土交通省 交通政策審議会鉄道部会 中央新幹線小委員会 の答申
日本のリニアの特長
2027年?東京-名古屋開通に向けた具体的作業の開始
本当の非接触走行のために

4. 鉄輪形リニア:カナダ, 日本, 中国市場
カナダにおける先行開発と、ボンバルディア社の世界戦略
日本のリニアメトロ
 大阪、東京、神戸、福岡、横浜、仙台
日本地下鉄協会における技術開発
韓国Yongi線の蹉跌
中国市場にむけた技術検討の努力

5. リニアモータ国際規格化
リニアモータに関する学術研究
2006年からの日本国内準備会
日本発 New ProposalIECへの提案とPT62520の成立
 参加国と参加メンバ
 文書検討スケジュール
20081月 プロジェクト会合@京都
200812月 プロジェクト会合@キングストン(カナダ)
201001月 プロジェクト会合@ベルサイユ(フランス)

技術審議の重点と残された問題点
 ビジネスの考え方、商習慣と企業の役割の相違
 専用試験線と実車試験の位置づけ
 残された問題:あくまでも車上一次形リニア誘導モータの標準化文書としてのIEC62520
文書の発行と日本鉄道車輌工業会におけるJIS化作業

6. おわりに 
磁気浮上とリニアドライブ
実用化の最も進んだリニアモータカーとしてのリニアメトロ
今後の展望
 飽和する国内地下鉄市場 
 台頭する韓国、中国との関係
 自動運転とリニアメトロ
 中央新幹線への期待
 減圧トンネルとリニアドライブ 
講演時にお示ししたスライドのコピーをここからご入手ください。
(暗号化文書のため当日配布資料にお示ししたPWを入力して開いてください。)

---講演中に気づいたこと、講演後の御議論に基づく補遺---

(1)スライド 33ページ 超電導磁気浮上式鉄道実用化技術評価委員会
  これまでで行われた技術評価

最近の状況の補足
2009年7月
「超高速大量輸送システムとして運用面も含めた実用化の技術の確立の見通しが得られており、営業線に必要となる技術が体系的に整備され今後詳細な営業線仕様、および技術基準等の策定を具体的に進めることが可能になったと判断できる」 (ただし、この段階では、車輌への電力供給の方法は残された課題とされていた。)

2011年9月
「誘導集電については、車上電源として実用化に必要な技術が確立している。」


(2) スライド 35ページ
実際に新幹線を二十年動かしている会社が....
 ==> 現時点では、二十四年 (国鉄時代を含めれば四十七年)

以上を補足・修正いたします。

2011年11月7日月曜日

第二回鉄道技術展講演会「技術発展と飛躍のための鉄道技術者結集」古関講演関係資料

 ---01---
第二回鉄道技術展講演会「技術発展と飛躍のための
鉄道技術者結集」(1)
人材育成/国際連携/産学協力

東京大学大学院工学系研究科
電気工学専攻
古 関 隆 章


講演のメモを改めて下記に記します。

---スライド番号 02-09---
自己紹介

---10---
はじめに

軌道系公共交通システム
--持続可能な産業発展  
  --成熟した生活の豊かさ

海外市場展開の重要性
交通社会基盤としての価値 ==> 若者も実感

鉄道技術の飛躍
 既存の工学技術分野を融合した横断的議論
 人的交流

 海外の知を活用する国際連携

次世代の鉄道技術を支える人材育成を視野
==> 鉄道技術者結集

国際連携
産学官連携の展開の近未来像

---12---
日本の鉄道黎明期の歩み

イギリスから技術導入して建設
建設指導の技師、機関士などの要職も全てイギリス人
鉄道開業時に使用された蒸気機関車も、イギリスから輸入

鉄道の左側通行
車両との段差をなくすホーム、
ホームに面して改札口を設けるスタイルなど
==> 全てイギリス流である

Edmund Morel (1870年 来日)
1840年11月17日 - 1871年11月5日

1870年(明治3年)鉄道敷設のため測量、着工
枕木: 加工しやすい国産の木材
多摩川(六郷川)の六郷川橋梁 木橋
1877年 鉄橋に交換

線路敷設:反対運動
全線29kmのうち、1/3にあたる約10kmが海上線路
1872年(明治5年)5月7日(新暦6月12日)に品川駅 - 横浜駅(現在の桜木町駅)間で、仮開業
2往復列車運行 翌8日に6往復
9月12日(新暦10月14日)に新橋駅 - 横浜駅間開業式典@新橋駅
正式開業時の列車本数は日9往復、全線所要時間は53分、表定速度は32.8km/h

1922年(大正11年)から10月14日は「鉄道の日」

新橋駅 - 横浜駅間開業から30年余りで7000kmを突破した日本の鉄道網
==> 日本近代化の礎に

---13---
お雇い外人と工部大学校
工作局長の大鳥圭介が初代校長兼任
初代都検(実質的校長)イギリス人Henry Dyer

1871年、工部省に工学寮が設置
1873年 大学設置
1877年1月 工部大学校に改称
(1876年 附属機関工部美術学校設置)
1885年、工部省の廃止に伴い文部省に移管
1886年の帝国大学令により東京大学工芸学部と合併、帝国大学工科大学となる
1897年(明治30年)6月 京都帝国大学の設置に伴い「東京帝国大学」と改称

---14---
人材育成:エアトン先生が開いた世界初の電気工学科

英国人電気科学者エアトン(William Edward Ayrton)は1867年にロンドン大学数学科を卒業した

後、グラスゴー大学のケルビン卿(Lord Kelvin)のもとで電気学と物理学を学んだ

---15---
東京大学電気工学科

1873年の設立

1853年のニューヨーク万国博覧会 Otis エレベータ
1889年 世界で始めてのエレベータの電気化
1890年11月10日 凌雲閣:日本最初のエレベータ
1879年 世界最初の電気鉄道 by Siemens
1895年 京都で日本初の電車による営業運転 

---16---
ベンチャーが自然に育った初期の大学

中野初子
1891年 工科大学教授
1899年 工学博士
電気学会会長
日本の電気事業創設に貢献

藤岡市助
電気、電球灯の普及に貢献
「日本のエジソン」、「電力の父」
電球製造の白熱舎(東芝)創設者のひとり

志田林三郎
1885年 隅田川の河口
水を使った遠隔地無線通信実験
(マルコーニの無線実験より9年前)

1878年 3月25日 明電信中央局発足
エアトンに指揮された藤岡市助、中野初子、浅野応輔ら電信学科の学生
フランス製デュポスク式アーク電灯

---17---
文明開化と蘭学の伝統

オランダ通詞
新井白石が『西洋紀聞』:開明的海外理解
徳川吉宗 漢訳蘭書の輸入禁止の緩和
青木昆陽、野呂元丈: 蘭語学習 実学の奨励

田沼時代
1774年 杉田玄白・前野良沢 オランダの医学書の『ターヘル・アナトミア』を訳す
『解体新書』と
平賀源内 蘭学全般 エレキテルの修理/寒暖計の発明

幕末の軍事的実学性の強い「幕府洋学」
高島秋帆 西洋砲術
江川英龍(太郎左衛門) 韮山反射炉
佐久間象山 大砲鋳造
永井尚志 長崎海軍伝習所
勝海舟 神戸海軍操練所

1858年設置の蕃書調所
1862年 対象をオランダ語から英語などに拡大
1863年 開成所と改称
==> 明治新政府に受け継がれ東京大学等

私塾
江戸 大槻玄沢の芝蘭堂
大坂 緒方洪庵の適塾
長崎 シーボルトの鳴滝塾
佐倉 佐藤泰然の順天堂

辞書:ハルマの『蘭仏辞書』
1796年 日本最初の蘭和辞典
1798年『ハルマ和解』
1833年『ドゥーフ・ハルマ』の完成

---18---
人材育成: 私塾の伝統
近代化の象徴: 松下村塾

松下村塾(1842-1892)江戸時代末期(幕末)
長州藩士の吉田松陰が講義した私塾

長州萩城下の松本村(現在の山口県萩市)
松陰の叔父である玉木文之進が設立
1857年(安政4年)藩校明倫館の塾頭を務めた吉田松陰が引継
1858年(安政5年)に松陰が野山獄に再投獄され廃止

武士や町民など身分の隔てなく塾生を受入
学問は「人間とは何かを学ぶことである」
「学者になってはいけない。 実行しなければならない」

短期間の存続
尊王攘夷を掲げて京都で活動した者
明治維新で新政府に関わる人間を多く輩出

久坂玄瑞、吉田稔麿、入江九一、寺島忠三郎、高杉晋作
明治の元勲:伊藤博文、山縣有朋、品川弥二郎、山田顕義、野村靖

---19---
蘭学と文明開化: 洋学の配電盤
適塾

蘭学者・医者 緒方洪庵が江戸時代後期1838-1868に大坂・船場に開いた蘭学の私塾

適塾25年の入門生およそ三千名

訳文、執筆の教訓: 福沢諭吉 『福沢全集緒言』

教える者と学ぶ者が互いに切磋琢磨する制度
学問研究----明治以降の学校制度とは異なる
==慶應義塾大学の「半学半教」

塾生間の信頼関係は緊密

蔵書解読で、「ヅーフ」(ヅーフ編オランダ日本語辞典)

「ヅーフ部屋」には時を空けず塾生がおしかけた。

月に6回「会読」
程度に応じて「○」・「●」・「△」の採点

3カ月以上最上席を占めた者が上級に
=成績制度の発案、採点制度

後に福沢諭吉は適塾時代を振り返り「目的なしの勉強」を提唱
純粋な学問修行
物事のすべてに通じる理解力と判断力を養う。
(緒方の死後、福澤諭吉、大鳥圭介を中心に集まり)

---20---
西洋文明導入としての近代: 阪大と適塾
福澤諭吉 大鳥圭介 橋本左内 大村益次郎 長与専斎 佐野常民 高松凌雲など
幕末から明治維新にかけて活躍した多くの人材を輩出
大阪大学と慶應義塾大学の源流の1つ

---21---
軍事インフラとして系統的に鉄道整備と人材育成を進めたプロシア
戦争のためのインフラとして発達した都市間幹線鉄道
-自由を謳歌する移動手段としての自動車
     <=> 計画的に整備された鉄道
1866年6/15-8/23 普墺戦争
1870年7月19日-1871年5月10日普仏戦争

---22---
Technische Hochschulen (ドイツの鉄道関連の工科大学)
Institut für Bahnfahrzeuge und Bahntechnik: TU Dresden
    http://tu-dresden.de/die_tu_dresden/fakultaeten/vkw/ibb
Institut für Elektrische Maschinen und Bahnen, TU Braunschweig
    http://www.iem.ing.tu-bs.de/
Institut für Verkehrssicherheit und Automatisierungstechnik, TU Braunschweig
    http://www.iva.ing.tu-bs.de/
Institut für Land- und Seeverkehr (ILS) Betriebssysteme elektrischer Bahnen, TU Berlin
    http://www.bahnsysteme.tu-berlin.de/
Instituts Verkehrstechnik, TU Cottbus
    http://www.tu-cottbus.de/fakultaet3/de/fakultaet/institute/verkehrstechnik.html
Institut für Verkehr, TU Darmstadt
    http://www.verkehr.tu-darmstadt.de/ifv/fachgebiete_ifv/index.de.jsp
Institut für Verkehrswissenschaften, TU Wien
    http://www.ivv.tuwien.ac.at/
Institut für Verkehrsplanung und Transportsysteme (IVT), ETH Zürich
    http://www.ivt.ethz.ch/

---23---
民間ビジネスとして発展した日本の鉄道

明治10年(1877年)の西南戦争後政府の財政難
新規建設は東海道線(明治22年(1889年)全通)などを除き停止

遅々として進まない鉄道整備
新橋駅 - 横浜駅間
北海道の幌内鉄道(後、手宮線・函館本線の一部・幌内線)
釜石鉄道、
大津駅 - 神戸駅間

岩倉具視・伊藤博文
私有資本を用いての鉄道建設

半官半民会社:日本鉄道設立

私鉄会社 同様な方式で誕生

明治の「五大私鉄」
日本鉄道+北海道炭礦鉄道、関西鉄道、山陽鉄道、九州鉄道
==> 大手私鉄時代 1906年(明治39年)鉄道国有法公布まで続く

---24---
軍事インフラとしての日本の鉄道

日清・日露戦争と鉄道
1878年の西南戦争
京浜間と京阪神間のみの運転 ==> 軍隊集結や港への輸送に大効果

明治維新後の日本の総力プロジェクト: 鉄道 ==> 戦争遂行に重要な役割

日清戦争 1894年-1895年
日清戦争:山陽鉄道が広島まで到達した翌月に勃発
鉄道の西の終点 広島:大陸に最も近いターミナル
広島で戦争指揮 明治天皇と大本営が滞在し

宇品港は大陸への積み出し港
各地部隊や軍事物資は官営鉄道と私鉄を乗り継ぎ広島集結

日露戦争 1904年-1905年
鉄道による軍事物資輸送: 日清戦争を大幅に上回る
輸送した人員は88万6千人
馬13万8千頭
貨物26万2千トン

戦時中: 一般の輸送は大幅に削減

==> 大規模私鉄割拠が戦争遂行に不便
例:弘前師団の出征: 弘前駅 - 福島駅 官営
福島 - 品川 日本鉄道
品川 - 神戸が官営
神戸 - 広島が山陽鉄道
広島から船で大陸へ
煩雑な業務:
各鉄道間のダイヤ 車両の遣り繰り 事後の運賃精算など

---25---
日本国有鉄道への幹線の統合

鉄道の有効性+私鉄割拠による不便
==> 陸軍が日露戦争後に鉄道国有化を要望
1906年3月「鉄道国有法」可決
=五大私鉄会社を含む大手私鉄17社の国有化(買収)決定

買収は1906年10月--1907年10月
国内輸送の基幹となる路線優先
 買収前の官鉄の総営業距離は2,459 km、
 買収後の国有化した路線の総営業距離は4,806 km

長距離列車の設定
東京 - 下関間の直通列車
奥羽線経由の上野 - 青森間直通列車など

膨大な国鉄保有車両=運用・整備・修理困難
==> 車両・機材の国産化/ 標準化

---26---
第二次世界大戦と鉄道

弾丸列車(<==後の新幹線構想につながる)
1940年1月16日:「東京・下関間新幹線増設に関する件」
東京から下関まで国際標準軌間 複線の建設計画
路線経路:東海道新幹線と山陽新幹線に相当
<==下関から朝鮮半島や中国大陸への人や物資の輸送を考慮
   旅客, 高速貨物列車, 荷物列車などを設定
旅客列車の最大速度電化区間で200 km/h、非電化区間で150 km/h

第二次世界大戦前
朝鮮・台湾・樺太などの鉄道を日本が建設
満州: 南満州鉄道が現地の開発 豪華列車「あじあ号」

第二次世界大戦中:戦時体制
産業用鉄道の国有化や私鉄の統合
「不要不急の旅行」の抑制

1943年(昭和18年)2月以降 旅客列車削減
1944年(昭和19年) 特急列車・一等車・食堂車・寝台車 全廃

---27---
国鉄の分割/民営化

1987年4月1日 中曽根康弘内閣が実施
日本国有鉄道(国鉄) ==> JRとして6つの地域別旅客鉄道会社
                          1つの貨物鉄道会社などに分割/民営化
---29---
国鉄民割24年
JR各社: 独自の経営方針
バブル崩壊後
大規模なリストラ 
=> サービス簡素化/水準低下
  新幹線食堂車の廃止/
供食サービス縮小
   寝台列車の削減
   ローカル路線の廃止など

順調な旅客運輸
<=> 貨物運輸 ほとんどトラック

安全対策 人材育成に問題 
  昨今の鉄道事故の下げ止まり?
第三セクターの赤字問題
苦しい地方中小民鉄の経営
国内輸送市場の飽和

---30---
手詰まり感?
国土交通省交通政策審議会の問題意識

平成20年1月25日
交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会・緊急提言
「地域の暮らしや観光、まちづくりに組み込まれた持続可能な鉄道輸送の実現に向けて」
経営状況の悪化に伴い事業廃止に至る事例が相次ぐ地方鉄道に焦点
==>上下分離の実施
土地等重要な資産の地方公共団体による保有等
事業構造の変更、鉄道事業を再構築
「頑張る地域と鉄道事業者」の真摯な取り組み
国としても必要な支援を積極的に実施
===
2008年6月19日
環境新時代を切り拓く、鉄道の未来像
ー 鉄道がつなぐ、エコフレンドリーな生活圏の創造に向けて -

1 「安全・安心」への意識の高まり .
2.地球環境問題の深刻化
3.情報通信技術の発展
4.経済社会の成熟化に伴う、価値観やライフスタイルの多様化
5.本格的な少子高齢化の進展
6.地方の活性化と都市の魅力の向上の必要性
躍進する中国/国際市場への展開

---32---
震災を超えて

あの地震があっても死亡事故ゼロ
東北新幹線の復旧
新青森から鹿児島中央まで

---33---
国際市場への挑戦:日立のUK進出

---34---
リニア誘導モータ国際標準の発行

---35---
広がりつつある国際標準化活動における日本の存在感
日本の国際認証機関の設立

---36---
中央新幹線の建設開始

---37---
磁気浮上:真の非接触高速走行のための技術
非接触集電

---39---
私的勉強会
としての「鉄道技術の明日を語る会」と「鉄道技術者を結集する会」

「鉄道技術の明日を語る会」
(顧問)井口 雅一    (座長)中村 英夫
(世話人)岩沙 克次, 佐伯 洋, 工藤 希
(メンバ)渡邊 朝紀, 水間 毅, 廣瀬 道雄, 白川 保友, 鈴木 学, 深谷 研二, 古関 隆章

2009年12月から21回の私的議論の会を開催 
JREA誌に議論内容を紹介する記事を掲載
2011年11月11日午前のシンポジウム:
目を覚ませ日本の鉄道 そして日本の未来にもっと元気を

「鉄道技術者を結集する会」
発起人: 須田
世話役: 庄司 鼠入 
(2011年春から、現在、1-2ヶ月に1度、日本鉄道技術協会、東京大学、日本大学、日本車両工業会などで定期会合を開催)
さらに鉄道学会を結成しようという動きも
第1回鉄道技術将来戦略検討委員会(2011/3/8)

---40---
鉄道技術展の発足と継続
2010年 11月 第1回
2011年 11月 第2回
以後 2年に一度ずつ開催?

+++
後援     国土交通省、経済産業省、文部科学省、日本貿易振興機構(JETRO)、
北海道旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、
西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社、
日本貨物鉄道株式会社

協賛     公益財団法人 鉄道総合技術研究所、公益財団法人 東日本鉄道文化財団、
社団法人 海外鉄道技術協力協会、社団法人 日本交通計画協会、社団法人 日本地下鉄協会、
一般社団法人 日本鉄道技術協会、社団法人 日本鉄道車両機械技術協会、
社団法人 日本鉄道車輌工業会、一般社団法人 日本鉄道施設協会、
社団法人 日本鉄道電気技術協会、一般社団法人 日本電機工業会、
社団法人 日本電気制御機器工業会、社団法人 日本建設業連合会、
社団法人 日本モノレール協会、社団法人 日本民営鉄道協会、一般社団法人 信号工業協会、
一般社団法人 鉄道分岐器工業協会、日本鉄道車両輸出組合、全国路面軌道連絡協議会、
日本試験機工業会、一般社団法人 日本自動販売機工業会 ※順不同
+++

---41---
広い視野と構想力を持った技術者の確保と養成(JR-1)
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から
鉄道を取り巻く厳しい環境
 少子高齢化による利用者の減少/ 環境保全、省エネルギ/ 他輸送機関との競争の激化/ 利用者の意識の変化など

鉄道の安全性向上と経営改善のための技術面の多数の課題
多様で複雑な課題の解決:幹部技術者の役割

求められる能力
適切な改善課題の発掘
適正な解決策の発見 
改善施策をリードする力

自社技術の全体の掌握と新しい技術動向の知見
問題解決能力
経営感覚と構想力をもつ人材の確保

属人的資質、感性に依存<=>総合技術経営者を確保するための体系的な人事・養成プログラム

先進的技術分野: 社外の研修・講習会での習得
他会社への出向や大学研究室や経営学研究室への短期留学の形で実体験
学習と上級技術者との交流による情報交換基盤を形成

必要な構想力やリスクマネジメント力の資質を磨く
技術・経営に関連した討論
モノの考え方や解決方法、思考の方法の習得
社会人・技術者・鉄道人としての技術倫理
人間心理の分野の知見

---42---
広い視野と構想力を持った技術者の確保と養成(JR-2)
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から

技術系ジェネラリスト: 見識=実経験を踏まえた洞察力と未来に向けてのイマジネーション力
 現場、鉄道のいろいろな部門、ステージを経験して涵養される

人材の確保は可能:
(1) 鉄道会社が優秀な人材を継続して採用
(2) 適切なキャリアパスの下で時間を掛けて養成

問題点
 国鉄民営分割後JR各社の技術者が自社の経営課題を優先しがち
==> 鉄道業界全体を俯瞰しビジョンを立てる気風が薄れてきている?

鉄道各社、メーカー、大学等が参画する「鉄道学会」のような場を創設
 情報交換や議論の深度化 鉄道技術の啓蒙を図る。

JREAなど既存の協会組織を基に「鉄道学会」を主導する組織にしていく?

---43---
広い視野と構想力を持った技術者の確保と養成
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から(民鉄)

民鉄では幅広い視野で判断するための教育の教本も教育項目も無い。

専門分野:大手民鉄には鉄道一般から自社採用の資機材・機器を含めた教本がある
中小民鉄は教本は無い。(実務教本は鉄道総研の刊行本: 基本事項は作成可能)

中小民鉄では教師も適任者が少ない
中小事業者には鉄道総研や経営者の支援が必要

事業者内の歴史的負の遺産: 分野の縦割り意識
実務処理の現実
鉄道技術界一般でも各種協会の活動例でも顕著
 
事故対応経験不足
事故内容の詳細が当該事業者から開示されることは極めて稀
国交省からの事故情報を教材として有効活用
最近の重大事故を再発防止の教材として社内展示する事業者もある
自社ではJR東日本に協力を得て白河研修センター見学を随時教育に加える例も:JRの理解が得られるなら貴重な経験

事業者間の相互理解と情報開示の進展==> 中小民鉄のレベルアップ

社外研修および講演会等: 国交省、鉄道総研及び各協会において無料・有料の各種研修会等
中小が必要とするテーマとの乖離も:現場サイドが消化不良
ギャップを如何なる方策で繋ぐのか?

---44---
広い視野と構想力を持った技術者の確保と養成
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から(メーカ)

鉄道システムメーカーとして規模の拡大を目指す成長
 人材の確保が必須
 毎年規模の維持・拡大のため一定数の新規採用、即戦力としての経験者採用を実施

新規採用は大学・大学院卒の電気工学・機械工学系専攻を中心とする採用

基礎的な教育・研究を受けてきた人材
入社後2年間に事業に必要な専門技術教育を実施 
その後職場に配属し実務経験
社外・社内の技術者研修に参加させる
その後、実務での経験の蓄積、自己研鑽に期待し、技術者としての成長を待つ

従来:システム・インテグレイターである鉄道事業者の指示に従う
専門分野の製品を設計・製作・納入すれば良かった

事業のグローバル化=ビジネスモデルの変貌:
社内に鉄道事業者に変わるシステム・インテグレイタとしての技術系ジェネラリストが必要
その確保と育成に苦労
現在は国内鉄道ビジネスで最優秀なエンジニアと現地で採用したローカル・エンジニアを当てる
量の確保と質の充実を目指した組織的・体系的養成計画はできていない

鉄道技術ジェネラリストの育成:本人の適性、資質を見極め、
海外での業務の経験 
社内でのローテーション 
社外教育講座の受講等 をバランスよく体験させる。

---45---
技術系エキスパートの確保と養成
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から(JR-1)

[1] 現業部門の指導・監督のエキスパート
社員の指導・監督および社外(メーカなど)の専門家との折衝
技術力と指導力が鍵
  現状(人・作業・機器など)の正しい把握と認識
  改善・改良の指導力
  新しい技術動向の把握が必要

社内・社外(講習会参加など)の教育プログラム
事故・故障の減少によって異常時に遭遇する機会が少ない
対処能力:
大きな鉄道会社: 電子機器の不具合、運転取扱いの変更、事故時などへの対処能力
<==シミュレータ訓練
+ スキル向上のため 現場教育の充実と幹部の指導力向上の教育を追加する必要

[2] 間接部門(計画部門)の専門技術エキスパート
現状
 社外の専門協会が主催する講習会や研修会への参加
 電機メーカや研究所に出向
さらに今後
鉄道外の自動車業界や情報系企業など先進技術企業・大学研究室への出向
短期研修などによる先進技術の学習と導入
==>時代を先取りする感性を涵養する教育体制

---46---
技術系エキスパートの確保と養成
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から(JR-2)

鉄道技術の多様化:鉄道事業者や鉄道専門メーカー等だけで成立せず
広く世の生の最新技術を導入する時代<=> 鉄道固有の技術領域も存在
車両の走行装置の設計や保守
保線技術、保安システムの設計や保守、
 故障発生時の迅速な原因究明や応急措置など
<==現場を中心としたOJTで継承

問題
急速な世代交代<=>現場の効率化や外注化などで少なくなったOJTの機会と時間

(例)JRE車両部門: 大量退職に対応するためOBを活用した外注化がこれまで主流だったが、そのOBも少なくなっている: 外注会社の優秀な若手をいかに採用し、育成するかが課題

即戦力になりうるエキスパートの育成:
鉄道技術教育機関を充実して基礎教育を施す

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技術系エキスパートの確保と養成
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から(民鉄)

中小民鉄
経営方針の相違 人材のレベル(問題意識、能力等)の差

 動免取得養成は親会社もしくは同種(モノレール等)、親交事業者に委託
免許取得後自社路線で2か月程習熟運転を実習して1本立ち
教育の主体は現業長に任せる傾向
会社によっては一人二役など要員不足の発生も
費用を要する外部教育や外部講師を要請しての教育には消極的
現場の総合的訓練: 余裕がない、各分野ごとに必要なら実施

中小民鉄に時間とお金と労力をかけて技術者を養成する力は無い
メンテナンスには経験と勘、加えてIT力をも活用した的確な判断力
即戦力としてゼネコン等有資格者を含めた中間採用を実施 <==年収の低さから敬遠されがち

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広い視野と構想力を持った技術者の確保と養成
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から(メーカ)

鉄道事業者に納入した製品・システムの信頼性・安定稼動が事業継続の要
==> 設計・製造・品質保証の現場の技術力の確保・士気の維持に最大限注力

熟練・ベテラン技術者の技術・ノウハウのOJTによる若手への伝承、教育
映像による匠の技の伝承

地方に拠点を置いている設計・製造部門
地元で若手技術者採用を充足
地道な活動を継続して現場の技術力の維持・向上を図る

今後の事業のグローバル展開
製造拠点も海外に展開 <=> 強みである日本品質の実現
図面・製作指示書等のエンジニアリングデータの国際化
現地指導員の確保等

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大学における人材養成
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から

<問題点>
基本
 鉄道をどうやって動かすのか、
 歴史的にどのように発達し
 社会でどのような役割を果たし、鉄道会社が何を考え、列車を動かすことは社会の中で結局どのような役割を果たすことになるのか、ということを一般学生が学ぶ機会はない

大学の工学教育: 一般的に視野の広い技術者・研究者の養成
大学院重点化:研究業績を中心とした業績評価が厳しく問う---研究者養成という性格
==> 鉄道関係業界の人材ニーズとは方向性は一致しない

大学の活動中心:大学院学生 外国人比率の高まり
 <=> 優秀な人材を日本の鉄道事業者が受け入れる可能性は事実上ゼロ?

鉄道に関係の人材や現状の産業活動における役割は限定的
寄付講座 ==> 総合的観点からの鉄道技術教育の活性化への貢献
  工学院大学エクステンションセンターの鉄道関連講義

鉄道関係産業に従事する技術者で自分の専門以外の分野について勉強しようという人向け
横断的鉄道関係技術者・研究者交流の場としてJ-Railを発展させ常設的学会に?

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学協会による教育・研修のシステム
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から

鉄道電気技術協会
    電力・信号・通信 技術講習会 基礎課程 普通課程 高等課程
    技術認定講習会 (信号ケーブル接続方法・通信ケーブル接続方法・レールボンド溶着方法) 
    鉄道設計技師受験講座(1日)

関東出改札システム協議会
    出改札システム講習会

日本鉄道運転協会
講習会
運転設備研修講座(3日間)
運転理論講習会(4日間)
運転法規研修講座(3日間)
運転関係指導者講習会(3日間)
輸送技術管理者ゼミナール(3日間)
保安講習会 (運転適正検査、工事管理者、線路閉鎖責任者、土木検修責任者、線路検修責任者、特殊運転者,軌道工事管理者、軌道作業責任者、軌道機械操作者)

関連学会における活動
土木学会、日本機械学会、電気学会、サイバネ協議会などにおける、各種大会、研究会などの研究発表の場や若手向けの講習会

鉄道関係の国際学会/三学会が共同で開催するJ-Rail

公益法人としての鉄道総合技術研究所の貢献 
鉄道事業者と関係メーカの技術者向け鉄道技術講座
  
第三者、私企業による鉄道教育システムの販売
PCを用いた自習教材として
        乗務員養成教育ソフト
        駅舎員教育ソフト  などが商材として、供給されている。
オンライン教材
        東芝トランスポートエンジニアリング 鉄道教育システム事業(オンライン教育プログラム)

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大学間連携と産学連携
「鉄道技術の明日を語る会」の人材育成の議論から
鉄道に関する研究をしている大学の研究室は一定数ある
まとまったデータは無い
鉄道に関する教育の充実: 教員を集めネットワークにする必要

日本の大学における工学教育
土木、化学、機械、電気など分野別専門教育
鉄道システムを総合的に修得

体系的な「鉄道とは」という授業?
工学部等のもの作りの視点
鉄道の経営等の社会科学的な視点の両極

鉄道大学がある中国
伝統的な鉄道工学講座を有する欧州の主要国とは異なる
 <==ただし彼らの方が優れているのか?

全体を教える教員あるいは講義のネットワークが必要

---53-54---
おわりに
 (1) 鉄道技術と人材養成 歴史的経緯
 (2) 現在関係者が感じている問題点
 (3) 最近の「進歩」と課題
 (4) 人材育成に関する「語る会」での議論
 (5) 鉄道技術者結集の意義

学校教育としての大学・大学院---ある程度の役割
土木系・電気系・機械系: スタート時点での見識の幅が狭くなる?
==> 自由で柔軟な学生のうちにじっくり幅広い見識を身につける方が、将来新しい発想につながる素養を培うのに有効

インドや中国などの交通網整備への要請が大きな国とは違う
× 鉄道大学、鉄道学部、鉄道学科などの創設 

全国の大学の理工系の研究室で鉄道の研究・教育を行なっている教員、研究室を結ぶネットワークを結成
鉄道事業者や鉄道建設・鉄道車両企業などの鉄道関係企業が連携
 <== 電事連を中心とするパワーアカデミィ

鉄道関係に職を求めようとする学生
ネットワークで結ばれる全国的、海外へ目を向け
グローバルな大学・大学院の講座や研究室と交流=> 鉄道技術に関するより広い見識を身につけよ

全国にある鉄道関係の研究室のリストアップ
教育者が相互に交流
NU-Rail, >
電気学会交通通電気鉄道技術委員会の夏の合宿,
J-Rail,
各種プロジェクト研究,
私的勉強会,...  ==> 鉄道技術者の結集を目指す会

研究面での連携を図り、関係する学生が大学における鉄道研究の全体を見渡せるような環境を整備することが急務

学校教育の特徴:「長期」に亘る「集団」教育
「同期生」としての人的ネットワーク
他の企業等の実情や文化ともいうべきモノの見の共有に実効的に寄与
クラスメートとの個人的交流:視野の広さの涵養に寄与
大学レベルで横の連携を通じ鉄道全般の教育の機会を提供することの意義は大

外部教育機関・研究機関としての大学や大学院の役割
社会人大学院制度
社員に費用も時間もかかる外部教育
企業の人材的、資金的余裕が必要 <== JRや大手民鉄、大手メーカでは可能?
        中小民鉄・中小メーカ: 相互扶助的制度や公的機関からの資金的助成などの仕組みづくり
大学研究室連携を利用した受入教育機関側の努力も必要