2010年11月24日水曜日

AGSセミナー補足資料 (2010/11/28改訂)

「リニアと新幹線への高速鉄道の将来性と中央新幹線」
2010/11/23 東京大学大学院電気系工学専攻准教授 古関隆章
2010/11/25 16:10-16:45
リニア新幹線と将来への期待

(1) はじめに
  目次
  自己紹介
  修士論文(磁気車輪とリニア誘導モータ)
  博士論文(磁束合成形リニア誘導モータ)
  磁気浮上技術への現在のかかわり
  講演内容と自分の立場

(2) 磁気浮上技術の特長-----鉄輪式との比較
  鉄輪の3つの機能
  速度ごとのモード分類
  リニアモータ.....ダイレクトドライブと長所と短所
  非接触支持と磁気浮上
  実は硬い磁石のばね ..... 乗り心地の問題と脱線
  信号保安と動力が同じ仕組みの中でできること(車上一次形リニアドライブ)

(3) 磁気浮上/リニアドライブの技術方式
  支持/案内/推進の方式一覧
  車輪と車上一次式リニア誘導モータ (リニアメトロ、スカイトレイン)
  車輪と永久磁石形同期モータ
  電磁吸引式磁気浮上と車上一次形リニア誘導モータ
  電磁吸引式磁気浮上と地上一方式リニア同期モータ
  誘導反発式磁気浮上と地上一次式リニア同期モータ

(4) 磁気浮上/リニアドライブ技術の歴史 ----- ドイツ、スイス、中国など
  早期の非接触支持のアイデア
  ドイツにおける早期の研究開発
  Transrapid 黎明期
  Transrapid 05 以後
  Swissmetro
HSSTとリニモ
  中国 上海磁気浮上高速鉄道とその後の展開
  その他 イギリス ドイツ(M-Bahn) 韓国 アメリカ ブラジル...

(5) 日本の国鉄由来の浮上式鉄道---リニア新幹線
  これまでの歩み
  超電導の選択とEDS
  宮崎実験線(とサイクロコンバータ)
  コイル配置と浮上・推進
  車上電源と非接触浮上
  山梨実験線 ----- パワーエレクトロニクスと超電導磁石信頼性の向上

(6) 超電導EDSと中央新幹線 ----技術開発と評価の経緯
  開発の主体:国鉄/鉄道総研から東海旅客鉄道会社へ
  試験線における走行実績
  超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会まで行われた技術評価
  最新の「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会」での議論
  画期的な東海旅客鉄道(株)自主計画宣言とその後の調査活動
  交通政策審議会中央新幹線小委員会

(7) 現状と日本のとるべき道
  日本の磁気浮上鉄道開発の特長--- 純粋な民間サービスとしての鉄道の歴史
  躍進する中国
  中国の躍進?と日本の磁気浮上鉄道技術
  見せ球としての高速鉄道
  2010年は「はやぶさ」の年 ----子供たちの夢
  中央新幹線リニアは早期の実用化を!

(8) まとめ
  磁気浮上技術一般論---特長、位置づけ、方式と歴史
  リニア新幹線の技術
  中央新幹線にかかわる議論の本日時点での状況 
  今後にむけた私見 --- 見せ球/国威発揚としての高速鉄道、互換性のないシステムの軛

上記のアウトラインに基づいて当日発表のスライドを作成いたしました。

著作権上の問題も考慮して、当日配布の資料に記載したパスワードで暗号化したスライドのコピーのファイルを、ここにアップロードいたしました。古関の事実誤任による不適切な記述がございましたら訂正いたしますので、忌憚ないご指導をよろしくお願い申し上げます。(スライドのパスワードをお忘れの方は古関宛にメールで直接お問い合わせください。)

2010年11月4日木曜日

第1回鉄道技術展セミナー 海外への展開!日本の鉄道産業への将来の提言(古関担当分 2010/11/11 14:00-15:00) について 2010/11/18 更新

2010年11月10日-12日に最初の「鉄道技術展」が幕張メッセで開催されました。
その際のセミナーに関する資料を下記に掲載します。

第1回 鉄道技術展 セミナー

2010111114:00-15:00 幕張メッセ国際会議場 301会議室

「海外への展開!日本の鉄道産業の将来への提言」(2)

 -----電気技術者の視点から-----

東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻 准教授 古 関 隆 章


[1] はじめに:
 日本の鉄道技術を語る会の論点

(1) 日本の高速鉄道は世界一だと言われているが、本当にそうなか?
(2) 日本のガラパゴス化? 技術者の問題意識
(3) 安全の性能、環境の性能、個々の製品の信頼性の高さは、日本の最大の強み
(4) 日本の鉄道技術の長所:きまじめな現場技術者による

[2] 鉄道の特長とは <== 特に 「電気鉄道」  (須田先生の言うとおり?)他モードとの比較では、何でも2番 でも大きな部分を担うのに都合が良い?   インフラ整備と維持が必要 <=> 人口密度が高い場所 

 公共性 ---
  都市間高速鉄道は国の力の象徴(新幹線 磁気浮上高速鉄道)
  都市鉄道はライフ・ライン: 市民のためのもの 都市景観の一部 観光的魅力
  地方: 交通弱者の移動手段 地方鉄道/ LRT/ バス,...
.........実はこの観点は欧州に比べれば弱い?
      早期の鉄道は民鉄として発達
      破綻した日本国有鉄道 ----公共性を正面に打ち出すことへの抵抗感
 高速性
 正確性
 環境適合性-----鉄道における環境対策は、暗黙のうちにローカルな公害対策であった (騒音、建設時の環境負荷,... グローバル環境として語られることは最近のこと)
 安全性
 安心感 

一方で、鉄道は、自由な資本主義 とは相容れない部分もある。

戦争のためのインフラとして発達した都市間幹線鉄道
自由な自動車 計画性を要求する鉄道

-----------
[3] 国際環境: グローバル化は不愉快か?
自動車産業との大きな相違: 国内市場できちんと食っていける(来られた?)日本の鉄道界
海外から見た日本の特徴:特殊な市場

---ヨーロッパで鉄道のシェアが圧倒的に高いスイス人による評価---
Compared with Swisses, Japaneses have: スイス人と比べて日本人は
Twice population concentration2倍の密度で住んでいる。
three times frequently use trains3倍頻繁に鉄道で旅している。
30% longer trip by rail 30%長く列車で旅をしている。
1/14 times freight by rail per capita1人あたり鉄道貨物輸送量は1/14倍。
60% more transport per operator1鉄道事業者あたり60%多く輸送実績がある。
30% less cars per capita人口1人あたり30%乗用車が少ない。
only ¼ times highway per capita人口1人あたりの高速道路長は1/4倍しかない。

海外市場への進出
市場開放の海外からの要求
国際標準化と日本の技術

日本語は世界に通じないというハンディキャップ

[4] 国際環境: 躍進する中国は脅威か?  日本の停滞は宿命か?
「賢明で誇り高い 隣人」 
==> 中国で鉄道が急速に延びるのは当然のこと  

ビジネスとしてみた場合「公平な競争にならないという問題」

知恵と経験にあふれる商人 上位下達の社会 

躍進する中国も高齢化の軛のもとに

長期的に持続可能でない発展 ---- 力のあるうちに進めねばならぬインフラ整備

==> 中国で鉄道整備が進むのは日本にとっても基本的に良いこと

[5] 再び「電気鉄道の優位性」についてのキーワード
車両技術:
 車両情報システム 合理的保守 
 高効率・正確な動力分散形駆動技術と回生制動 エネルギー管理
電力供給システム----歴史的多様性と保守管理の技術
運転保安と安全 将来を見て列車検知をどうするか?
運行計画・緻密な運行管理
ITの活用: 通信 車上情報システム 旅客営業 旅客案内設備   貨物? 
交通: さまざまな種類があり都市鉄道、地下鉄は強いが....
手薄なLRT分野 弱いネットワークとしての連携

[6] 海外ビジネス展開のために
(1) 己を知る
(2) 技術的先端性の主張
(3) 国際標準と日本の固有技術
(4) 計画性を重んじる文化、日本人のきまじめさは売れる技術となるのか?


[7] 己を知る

[強さと弱さは表裏一体!]

1. 組織
専門性と縦わり
事業者、メーカ、官、学、/コンサル、商社ーーー固定的? 基本的にdomesticーー>国際化対応への違和感?
日本的効率性と、匿名性
安全重視と保守性・変化に時間がかかること/持続性
日本語
独立採算性とインフラの持続可能性、更新の困難

2. 人
専門家としての矜持とモラル/偏狭姓と思考の固定化
鉄道としての一体感/異業種との人事・情報交換の不足
業界内での秩序と暗黙のヒエラルキー
弱点: 年齢構成のギャップ(JR?)と高齢化 持続可能性?

3. 技術
車両:
国鉄解体後の多様化:魅力向上と開発資源の分散化
環境親和性、信頼性の高さ<-->性能と堅牢性、快適性

土木:
鉄道固有技術についての国際標準化対応は基本的に不必要
日本固有技術ということで閉じていても構わない?しかし、東京大学において土木工学科はいち早く国際化を積極的に進めた

[8] 技術の先進性の国際発信:<見せ球 打ち上げ花火としての高速鉄道>
新幹線では<わかりやすい>先進性のアピールは難しい
日本のお家芸「超電導磁気浮上鉄道」の実用化は喫緊の課題
議論に時間をかけすぎる事なく早く建設すること!
 時間をかければ互換性のないインフラは死ぬ
日本の磁気浮上鉄道の特長: 鉄道事業者が主体的に研究開発を行ってきたこと 世界で稀有
==> ドイツ、スイスの轍を踏んではならない!
絶対にやるという気合が必要!
「賢明にして誇り高きわが隣人」の台頭を前に日本が国際競争力を目に見える形で示せる唯一最後のチャンス

方式 超電導誘導反発式リニア地上一次形同期モータ推進方式
 速いのがとりえ


[9] 国際標準化への取り組み ==> 片手間にはできない:人も金も本気でかける!

[10] 日本人のきまじめさは売り物になるか?----説明可能なシステム化、可視化がどこまでできるか?

[11] まとめ: 主 張
(1) 日本の技術は優れているという<先入観>を棄て頭を冷やす
==> 日本の強みと弱みを良く議論する 技術の囲い込みを回避
(2) 最高速の技術の早期商用化!==ナンバーワンでなければだめ
(3) 地方鉄道の持続可能な運営のための知恵の開発とアジアの大きな市場の重なり
(4) 「きまじめさ」を理解される形に!
 国際標準化と総合鉄道技術を俯瞰できる専門家の育成
(5) 「きまじめさ」をシステムとして体現する電気・電子・情報技術


おまけ: 沖縄に鉄軌道を! LRT Workshop in Okinawa 2010

訂正:

講演中で昨年度までの情報に基づき、日本の電子計算機の最高速度記録の世界的地位が急速に年々低下しているということを申し上げましたが、それから数日内に、現在の日本の地位が4位といわれるようになった事、評価法によっては最高性能とも言えるとの報道が出ましたので、(前言は講演時点では誤りではなかったものの)、現時点での情報に基づき修正させていただきます。