2017年11月2日木曜日

2017/11/06 技術講演「都市鉄道の自動運転にむけて ---ドライバレス運行の国際動向と技術的課題---」の補足資料

拙い講演にご参加くださりありがとうございました。その概要を以下に記します。11/7 10:30 JST に講演後の質疑のまとめも含めたスライド控えの更新をしました。

当日見ていただいた
 スライドの控えはこちらからご入手ください。(暗号化pdf 約4.8MB 2017/11/07 10:30 更新版)

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「都市鉄道の自動運転にむけて ---ドライバレス運行の国際動向と技術的課題---」スライド概要
古関隆章・水間毅(東京大学 大学院)

[1] 都市鉄道の自動運転にむけて---ドライバレス運行の国際動向と技術的課題 水間毅・古関隆章(東京大学)

[2] はじめに
都市鉄道の運転とその将来
Automated Guided Transport と自動運転
なぜ自動運転か? 
地下鉄への適用:国際動向 標準化
日本の地下鉄事業者の取り組み
自動車と鉄道の自動運転技術
都市鉄道一般への展開と技術的課題
省エネルギー運転と自動運転

[3] 都市鉄道の運転とその将来
[4] 大都市の大量輸送
朝ラッシュ時の最頻度運転: 
千代田線北千住 平日 8時台 23列車 
中央線新宿駅 8時台 22列車
輸送量比較:
通勤車 約140人/両
   例 E233系 10両編成で1539人  
バス 60-70
路面電車 約70人/両 (約20トン)
ナンシーTVR  145人 
トランスロール 110
航空機: 定員420
[5] 人口減社会における公共交通の重要性
[6] 持続可能な鉄道経営のために
情報通信技術の活用
需要への柔軟な対応
利便性を追求する短編成高頻度運行,
デマンド運行?
持続可能なビジネス: 省力化と高安全・高信頼運転の両立

[7] Automated Guided Transport と自動運転
[8] 1980年台に始まる新交通システム
[9] 魅力的な都市空間活用と移動手段
[10] 利便性と高速性

[11] なぜ自動運転か?
[12] 情報通信技術の活用 
サイバー・フィジカル空間としての都市鉄道
[13] 持続可能な鉄道ビジネス:省力化と高安全・高信頼運転の両立
1. 需要への柔軟な対応
2. 利便性を追求する短編成高頻度運行,デマンド運行?
3. 自動運転ならではのさらなる価値
[14] 輸送需要変化への柔軟な対応
(1) 経済成長への対応から人口減の社会
(2) ピークへの対応力を持ちながら、オフピークでも資源有効活用のできるシステム
いつも長編成の列車を走らせておくわけにはいかない
少ないスタッフで、運転もメインテナンスも持続可能な形?==>自動化 IT活用
(3) システム技術としての国際競争力
[15] 利便性を追求する短編成高頻度運行, デマンド運行?
(1) 輸送需要が少なければ、列車を間引くのではなく、短編成で利便性の高い高頻度運行を行う。
(2) 交通弱者への対応: 高齢時代は デマンド運行
(3) 運転の完全自動化は、イベント時の超高頻度運転および終夜運転にも貢献
[16] システムによる運転ならではの付加機能
1. イベント対応 高頻度運転
2. 終夜運転 (除雪のみの目的でも)
3. 省エネルギー運転(後述)
4. 電力融通を考慮した複数列車同期運転
5. 状態監視のための運転?
[17] 運行管理との融合 ビッグデータと学習機能
[18] 運転整理における柔軟性の拡大
(1) ドライバレスなら乗客と列車の筋で運行管理が可能に
(2) 現在でもATOの方が、運転再開は早い?
(3) OCCがすべてを把握し、情報を送り、列車を動かす
(4) 多くの手を「定石」としてもっておく
(電力システムのマネージメントも含む?)
(5) 機械学習でシステムも経験を積む?

[20] 地下鉄への適用:国際動向 標準化
[21] パリ地下鉄における実用化
地下鉄14号線で無人運転の実用化
← IEC62267に準拠した設計、ホームドア(フルスクリーン)による無人運転の実現化
地下鉄1号線での無人運転化(順次)、
→ CBTC(列車無線制御システム)への変更とセット   IEC62267で規定されたホームドア(腰高式)の実現
・パリ地下鉄公社(RATP)によるドライバレスは、省力化、省エネルギー化を目標
・トンネル内での非常停止等に対しては、OCCOperation Control Center)
からの指令、遠隔リセットによる再起動で基本的には対応するが、万が一の場合は、Staff30分以内に到着し、避難誘導を行う
[22] Bombardier社のビジネスモデル シリーズで世界展開 Innvovia
[23] 世界市場の広がり
[24] 国際標準化 IEC 62267 WG39
(1) 都市交通システムの運転士による運転を自動運転にする場合の、
リスクを低減させる方策例を述べ、安全性要件を述べる規格
RATP関係者が、国際主査)
(2) 都市交通の運転の機能を整理して、役割をStaffか、systemかによって、
自動運転の程度を階層化する
(3) DTO(Driverless Train Operation)、UTO(Unattended Train Operation)
を自動運転と定義する
(4) 現在の日本の無人運転システム(ゆりかもめ等の新交通システム)も
この規格に準拠している
(5) ホームドアの安全性要件もこの規格で記述されている
[25] IEC 62267 WG39における運転方式分類
[27] 日本における自動運転の実現方法
[28] 国内標準化 JIS E 3802
(1) IEC62267の成立を受けて、自動運転装置(ATO)JISの改定を行った。
(2) 自動運転装置(ATO)の試験法を定める規格で、IEC62267とは直接リンクしないものの、安全確保の考え方、ATOの機能は準拠している。
(3) ATOの構成についても規格化されているが、IEC62267は、構成そのものについては、規格化はしていない
[29] AGTにおける先行的展開
(1) 日本では、高架構造の新交通システムでUTO,DTOが実現されている。
(2) これは、避難誘導が比較的簡易に実施可能なことによる
(3) 基本的に、日本の新交通システムは、故障しない、駅間に停止しないことを
前提とした設計となっている。
(4) 地下鉄で実用化されないのは、トンネル内火災の場合の対応、避難誘導に
関して、車内にstaff(特に先頭)がい(て、異常を監視す)ることが基本と
なっているためである。
(5) この監視機能(火災等の異常)、避難誘導が、現状のStaffと同程度に実施
可能ならば、ドライバレス地下鉄は可能
(6) 福岡市交通局七隈線はDTOであるが、これは、設計時に、十分な駅部火災対策
を行い、また、先頭にStaffが乗車していることにより実現された。
[30] 日本の都市交通の運転自動化に向けた取組

[31] 日本の地下鉄事業者の取組
[32] 日本地下鉄協会における調査検討(1)
福岡市 七隈線 2005年 2月開業
2001年度: 日本地下鉄協会で、次世代地下鉄システム研究委員会(委員長 東京理科大学 正田英介教授 当時)
魅力有る駅空間の創造とドライバーレス運転の本格的な導入による安全性、利便性、快適性、経済性向上の可能性を集中的に討議: 20026月に報告書
[33] ドライバレス運転: 経済性は如何?
[34] 福岡市交通局の挑戦
[35] 日本地下鉄協会における調査検討(2)
引き続き、国土交通省での ドライバレス運転検討会
2005 3月「地下鉄における運転方式の課題と対応策に関する検討」  =>当面は運転士付きでの開業とした。
20142月から 地下鉄における運転方式の課題と対応策に関する調査検討小委員会(地下鉄のドライバーレス運転に関する調査検討)を現在までこれまで12回開催し、検討継続中 
[36] 日本地下鉄協会における 海外調査
[37] ドライバレス運転: 添乗員と巡回員
添乗員: すべての列車に乗務、動力車操縦者運転免許を有さなくても良い。列車先頭部の乗車でなくとも良い。
巡回員: 数列車中1列車に確率的に乗務、動力車操縦者運転免許を有さなくても良い。客室を巡回する。
 巡回員付きドライバレスが、公共交通の国際標準。
[38] 車上鉄道スタッフの役割と責任?
<男の鉄道?>:適性は男性にあるのか?
これは国際的には愚問:ドライバレスはお猿の列車?
安全確認、避難誘導は女性の方が適している?
セキュリティ管理巡回員 おっさん のほうが良い?
2. 行政の意思(省令など?)と鉄道事業者の判断
 安全上の判断を求められるなら、スキル・訓練の
 要求レベルは高い
[39] 2017時点で)懸念すべきは?

[40] 自動車と鉄道の自動運転技術
[41] 付加的機能から入ったITS---自動運転なんて....
[42] 自動運転はビジネスの核心に?
[43] 自動車の自動運転
[44] 自動化レベル
[45] 急激な変化 
エンジニアのおもちゃから実用化期待への劇的展開?
[46] 自動車の駆動技術の電気化と自動運転の相性
(1) 内燃機関から電気モータへ 頭脳も足回りも電気!
(2) モータ駆動 制御の速さ、精度、再現性....
  電気現象は機械系より2桁早い motion control
電気ー機械エネルギー変換の双方向性
   回生制動 バッテリーマネージメント
(3) 情報も電力供給も道路から: 走行中WPT
[47] 鉄道と自動車:融合研究分野ITSへの 交通研の取り組み
[48] 交通研の取組:広島における路上試験
[49] 問題の核心:(自動車自動運転における)安全の責任論
[50] 鉄道屋は自動車の技術発展から何を得るのか?
(1) 汎用センサの利用による高機能化、省コスト化
(2) 安全性の考え方
(ドライバーはバックアップか、完全にシステム依存か)
(3) セキュリティ(ハッキング対策等)の考え方
(4) 国際標準化の考え方
(国際商品としての自動車は、国際基準で規定する場合も)

[51] 都市鉄道一般への展開と技術的課題
[52] 無線列車制御CBTC 軌道回路からの解放
(1) ERTMS レベル3
(2) ATACS
(3) JR西日本による国際標準を意識した技術検討
[53] DTO@地上の都市鉄道でさらに考えるべきこと
(1) 踏切での安全性の確保
(2) 前方監視による安全性確保
(3) 避難誘導による安全確保

[54] 省エネルギー運転と自動運転
[55] 省エネルギー運転の基本思想と 「水間プロジェクト」
省エネルギー運転の基本(2010年時点で):運転支援による省エネ
(1) エネルギ蓄積デバイスの導入は当面将来課題とする。
(2) 走行時分は守る。
(3) 出来るだけだ行を長く導入する。
(4) 回生ブレーキを最大限有効活用する(ベストエフォート)
+大きな回生パワー放出を回避し回生失効を防ぐ。 
    定電力ブレーキ!
(5) 無駄な再力行を避ける。
(6) 加減速は最大性能を用いる:(加減速時間の最小化!)
[56] 人にとっての省エネルギー運転の難しさ
[57] 省エネルギー運転の基本思想と 「水間プロジェクト」 実装法と実績
[58] 省エネルギー運転 「水間プロジェクト成果例 in 2012
[59] 日本地下鉄協会 エコレール検討会
2013年度から3年間 日本地下鉄協会の取組
リニア地下鉄
 LIMの高効率化
 操舵台車導入効果
 省エネルギー運転
 ATOへの実装と評価
[60] 適用事例:走行時分を守るには? 埋蔵時間発掘
[61] 適用事例:リニア地下鉄における省エネ運転
[62] 適用事例:典型的な省エネ運転化の例
[63] 適用事例:ジャーク制御時間の短縮
[64] 適用事例:リニアモータ効率マップの測定
[65] 適用事例: 数値的最適化を用いた 省エネ運転曲線の導出(動的計画法)
[66] 適用事例:走行エネルギー測定
[67] 適用事例:駅間走行エネルギー削減例
[68] 適用事例:現車試験で得られた成果

[69] おわりに
[70] まとめ 鉄道事業の将来に明るい展望をもつために
自動運転 ドライバレス化に向けた検討は,新交通システムでの実現は先行したものの、在来鉄道では、「黒船」対策として始まった。
  在来鉄道における実用化では、マレーシア、シンガポール、中国の
   後塵を拝している日本
情報と実在システムの融合: 
    安全かつ高品質・高信頼な制御
  本来は日本のお家芸 のはず。 ?? 
昨今の有名メーカの悪いニュース 
 鉄道の安全神話に対する市民の信頼 在来鉄道の自動運転導入のバリア
 運転士、乗務員への信頼の高さ、機械、システム代替への故障時の
 対応への不安!?  高齢社会で乗務員の質・量確保に困難か?

高齢・人口減少社会における 安全ヒューマンモビリティの確保
日本初のシステムの国際競争力強化
 日本産 自動車 の生き残りをかけた研究開発 
    自動運転活用は自然かつ不可避な技術的方向性

慎重な行政: 鉄道事業に本当にメリットがあるか という疑問?
実績を通じ 社会の信頼を地道に得ていく努力の必要性

自動運転の付加価値: 人口減少社会での持続的鉄道運行、

 ----- 運行の柔軟性+省エネルギー、ビッグデータへの対応と人工知能応用?

講演後の議論

Q1: 運転士もしばしばミスをする、むしろ全自動化のほうが安全性が高くなるという視点で議論をすべきでは?
それは、原則的に正しく、少なくとも安全に列車を停止させるというところまでは、自動化されたシステムで信頼性を高めることができる。しかし、その後の旅客への適切な案内や避難誘導などは、スタッフの力が重要で、それをどのようにシステム化できるかは各事業者の事情も勘案しつつ注意深い設計が必要だろう。(水間)
Q2:  乗車率180%もあるような大量軌道交通も本当にドライバレスATO化の対象と考えるのか?
その議論はかつてヨーロッパでの国際標準化の議論の中でも行っている。ヨーロッパでは大量輸送への対応も優れた自動化で解決すべきという視点である。(水間)日本ではミニ地下鉄のようなところでまず実現をし、経験を積むことでより広い適用範囲を決めるという、「石橋を叩いて渡る」アプローチが自然と考える。(古関)
Q3: なぜヨーロッパでは早い時期に普及したドライバレス運転が、技術的に顕著に劣っていると思われぬ日本での実用化が難しかったのか?
日本は、圧倒的に人が多く、安全上の懸念事項が多い一方で、運行費用を全自動化で積極的に抑制するという強いインセンティブが、少なくとも急速な経済成長の下では働かなかったということがあると思うが、今後のことを考えれば全自動化は積極的に取り組むべき課題。また、日本における公共交通の安全性に対する社会的期待・要求の高さが新技術実装のハードルとなっていきた点にも注意すべきと考える。(古関)

その他、単線並列運転と全自動運転の将来的な関係性なども話題となった。

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